戦後70年首相談話 5つの論点で議論へ

参照元 戦後70年首相談話 5つの論点で議論へ

政府は、戦後70年のことし発表する「総理大臣談話」の取りまとめに向けて、有識者懇談会の初会合を開き、安倍総理大臣は、戦後70年、アメリカや、中国、韓国をはじめとするアジアの国々とどのような和解の道を歩んできたのかなど、5つの論点について議論するよう求めました。
政府は、懇談会の議論を踏まえ、ことし夏をめどに談話を発表する方向で調整を進めるものとみられます。

安倍総理大臣は、戦後70年のことし▽先の大戦への反省、▽戦後の平和国家としての歩み、そして▽アジア太平洋地域や世界にどのような貢献を果たしていくのかを「総理大臣談話」として発表する考えを示しています。
これを受けて、政府は、談話の取りまとめに向けて、25日、総理大臣官邸で、財界人や学識経験者ら16人をメンバーとする有識者懇談会の初会合を開き、安倍総理大臣、菅官房長官らも出席しました。
この中で、安倍総理大臣は「先の大戦に敗れた日本は、戦後の国際社会に再び迎え入れられ、先の大戦への反省のうえに自由で民主的で人権を守り、法の支配を尊ぶ国を作り、平和国家として、またアメリカの同盟国として、戦後70年間、アジア太平洋地域の平和と繁栄を支えてきた。同時に国際社会の一員として、発展途上国の開発協力、平和の維持、民主化支援等を通じて大きな責任を果たしてきた。この平和国家としての歩みは今後も変わらない」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は、▽20世紀の世界と日本の歩みをどう考え、その経験からくむべき教訓とは何か、▽戦後日本の平和主義、経済発展、国際貢献をどのように評価するか、▽戦後70年、アメリカ、オーストラリア、欧州の国々、また中国、韓国をはじめとするアジアの国々等(とう)と、どのような和解の道を歩んできたのか、▽21世紀のアジアと世界のビジョンをどう描き、日本はどのような貢献をするべきか、▽戦後70周年にあたって日本が取るべき具体的施策はどのようなものか、という5つの論点について議論を行うよう求めました。
そして、安倍総理大臣は「未来の土台は過去と断絶したものではありえない。先の大戦への反省、戦後70年の平和国家としての歩み、そのうえに、これからの80年、90年、100年がある。これから日本がアジア太平洋地域や世界のため、さらにどのような貢献を果たしていくべきか、これから日本はどのような国になることを目指すのかといった点について考えていきたい」と述べました。
このあと、会合では、座長に日本郵政社長で、日中両国の有識者らで作る「新日中友好21世紀委員会」の日本側の座長を務めた西室泰三氏を、座長代理に集団的自衛権の行使を巡る有識者懇談会で座長代理を務めた国際大学学長の北岡伸一氏を選任しました。
そして、今後、安倍総理大臣が示した5つの論点について議論したうえで、夏をめどに議論の内容を安倍総理大臣に報告することを確認しました。
政府は懇談会の議論を踏まえて「総理大臣談話」の策定作業を本格化し、ことし8月15日の「終戦の日」をめどに談話を発表する方向で調整を進めるものとみられます。

懇談会のメンバーは16人

有識者懇談会は、財界人、学識経験者、ジャーナリストなど16人がメンバーです。
25日の会合で、座長には日本郵政社長の西室泰三氏が選ばれました。
西室氏は日中両国の有識者が政治や文化など幅広い分野で議論し、政府に提言を行う「新日中友好21世紀委員会」の日本側の座長を務め、去年12月に中国を訪問した際には李克強首相と会談しました。
また、座長代理には、集団的自衛権の行使を巡る有識者懇談会で座長代理を務めた国際大学学長の北岡伸一氏が選任されました。
このほか、おととし、アルジェリアで起きた人質事件を受けて、テロなどの緊急事態が海外で起きた際の具体的な対策を検討する有識者懇談会で座長を務めた元外交官で、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏、紛争の予防や再発防止に取り組む認定NPO法人、日本紛争予防センター理事長の瀬谷ルミ子氏、日本の平和と安全に関して総合的な調査研究を行う「平和・安全保障研究所」の研究委員を務める東京大学大学院教授の古城佳子氏らがメンバーとなっています。
座長を務める西室氏は総理大臣官邸で記者団に対し、「非常に年齢層も違うし、いろいろバックグラウンドの違うかたがたが集まっているので、できるかぎり意見を自由に出していただくことがいちばん大事だ。
その中からコンセンサス的なものが出てくれば望ましいと思う」と述べました。
また、西室氏は、安倍総理大臣が5つの論点について議論するよう求めたことに関連して、「これからの議論のいわば柱になるのが5項目であり、それに基づいての話が当然始まる。
ただ結論について今から決め打ちをする気は全くないし、それをやってはいけないと思う」と述べました。
一方、西室氏は、記者団が「過去の植民地支配と侵略に対し痛切な反省を表明した、いわゆる村山談話などのキーワードを踏襲すべきと考えるか」と質問したのに対し、「議論の中で自然にいろいろな考え方が出てくると思うが、『談話に入れろ、入れない』ということを指示する気は全くない。
それを期待されている訳ではないと理解している」と述べました。
         

過去の「首相談話」のポイントは

「総理大臣談話」は総理大臣が歴史認識や重要政策に関する意思を内外に示す場合などに出されています。
戦後50年の平成7年には、当時の村山総理大臣が「わが国は遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた。
私は疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここに改めて痛切な反省の意を表し、心からのおわびの気持ちを表明する」などとする談話を出しました。
戦後60年の平成17年には、当時の小泉総理大臣が「わが国はかつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた。
こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明する」などとする談話を発表しました。
いずれの談話も「植民地支配と侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」などの文言が盛り込まれており、戦後70年のことし発表される「総理大臣談話」で、これらの文言がどのような形で引き継がれるのかが焦点の一つとなっています。
           

自民 谷垣幹事長「未来志向がいちばん大事」

自民党の谷垣幹事長は、総理大臣官邸で記者団に対し「総理大臣談話を有識者が書くのではなく、いろいろな意見を聞くということなので、十分耳を傾けてもらうことが大事だ。
もちろん反省も必要だが、いちばん大事なことは未来志向で、今後、将来に向かってどうしていくかということだ」と述べました。

公明 石井政調会長「政府・与党でコンセンサスを」

公明党の石井政務調査会長は、記者会見で「政府は、まずは有識者懇談会で検討してもらうということなので、懇談会での検討を見守りたい。
談話は国内外から注目されており、多くの国民が納得し海外からも評価が得られるような内容にすべきだ。
談話が出される前に、政府・与党でコンセンサスを得ることが必要であり、いずれ公明党にも何らかの打診があるものと思っている」と述べました。

民主 枝野幹事長「歴代談話踏まえた議論を」

民主党の枝野幹事長は、記者会見で「これまでの自民党政権、あるいは自民党も含む政権で出されてきた談話は単なる一内閣の見解を越えて、日本の歴史認識として受け止められていて、日本の外交の重要な基盤になっている。
そうしたことをしっかり踏まえて、国民的な議論が実質的になされるよう期待している」と述べました。

維新 江田代表「深い反省とおわびは不可避」

維新の党の江田代表は、東京都内で記者団に対し「戦後、日本が歩んできた平和国家の道を、これからも守っていくことを世界に向けて発信する未来志向の談話にして欲しい。
そのうえで、村山談話や小泉談話を安倍総理大臣も引き継ぐというのならば、日本が過去に行ってきた植民地支配や侵略に対する深い反省とおわびは避けて通れない。
談話の文言を見て、党の見解をまとめ、もの申すことは申し上げていきたい」と述べました。

共産 穀田国対委員長村山談話否定なら必要ない」

共産党の穀田国会対策委員長は、記者会見で「いわゆる村山談話は国策を誤り、侵略戦争と植民地支配を行ったことを反省するというのが核心部分だ。
有識者懇談会がどういう形の結論を出すにせよ、その核心部分を事実上否定するような談話は必要ない」と述べました。