安全保障関連法案の参院での審議 質疑の詳報(27日)

参照元 安全保障関連法案の参院での審議 質疑の詳報(27日)

 【自民党・山本順三氏】 (集団的自衛権の行使容認について)個別的自衛権の拡大では、なぜ対応できないのか説明を。単に戦争に巻き込まれるという不安を一方的にあおる一部野党の宣伝活動や報道は無責任だ。徴兵制につながるという声も、根も葉もない悪意に満ちた感情的、扇動的論理だ。

 【安倍晋三首相】 現在の法制度では、日本のために公海上で警備、監視の任務にあたる米軍が武力攻撃を受けても、日本自身への攻撃がなければ守れない。限定的な集団的自衛権の行使を認めて「戦争国家になる」という主張に従えば、世界中のほとんどの国家は戦争国家。徴兵制は明確な憲法違反であり、導入は全くない。

 【民主党北沢俊美氏】 首相は(昨年末の衆院)選挙で勝ったことに解釈改憲の正当性を求めているが、解散の会見で「アベノミクス解散」と言い、自民党の選挙公約でも集団的自衛権という言葉は使わなかった。そもそもこの法案は憲法違反だ。国民が求めているのは対案ではなく廃案だ。

 【首相】 選挙戦の党首討論会では、毎回活発な議論が行われた。平和安全法制が総選挙の主要な論点の一つであったことは明らかだ。憲法解釈を最終的に確保する機能を有する唯一の機関は最高裁判所だ。平和安全法案はその考え方に沿った判決の範囲内であり、憲法に合致したものだ。

 【公明党・荒木清寛氏】 わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることについて、具体的に説明を。なぜ法案を成立させなければならないのか。

 【首相】 中国の国防費は1989年以降、ほぼ毎年、2桁の伸び率を記録している。尖閣諸島周辺では、中国公船による領海侵入が繰り返されている。北朝鮮は、日本の大半を射程に入れる数百発もの弾道ミサイルを配備している。平和安全法制は、国民の命と幸せな暮らしを守るために不可欠なものだ。

 【荒木氏】 中国、韓国との関係改善は急務だ。

 【首相】 中国とは、習近平国家主席との首脳会談を通じ、関係を改善していくことで一致している。韓国とも、関係改善に向けて話し合いを重ねている。

 【維新の党・小野次郎氏】 存立危機事態について、自国防衛のための集団的自衛権の行使という考え方が自己矛盾に陥っている。他国防衛への乱用の恐れが排除されない。

 【首相】 存立危機事態で許容される武力行使は、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限の自衛の措置に限られ、他国を防衛すること自体が目的ではない。

 【小野氏】 イラン政府が不快感をあらわにして可能性を否定しているように、(ホルムズ海峡で)機雷封鎖という事態は全く想定されない。今回の安保法制に含めることを断念する考えは。

 【首相】 特定の国が(ホルムズ)海峡に機雷を敷設することを想定しているわけではない。中東地域においても安全保障環境が厳しさを増す中で、万全の備えをしておくことが重要だ。

 【共産党市田忠義氏】 自衛隊が武器の輸送、弾薬の補給などの兵站(へいたん)活動ができるようになれば、相手から攻撃される危険が格段に高まる。日本国民も憎悪の対象になる。

 【首相】 わが国が実施する後方支援は戦闘中の場所で行うものではなく、危険を回避して安全を確保した上で実施するものだ。自衛隊の活動が戦闘行為になることはなく、国民が憎悪の対象となったり、脅威にさらされたりするとの指摘は当たらない。

 【市田氏】 戦後、一人の外国人も殺さず、一人の戦死者も出さなかったのは日米同盟や軍事的抑止力のおかげではない。

 【首相】 平和安全法制の目的は、憲法の枠内で国民の命と平和な暮らしを守り、国際社会の平和と安全にこれまで以上に貢献することだ。