酒の安売り規制、自民法案準備 「まちの酒店」働きかけ

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 酒の安売りが行き過ぎないように規制する法案を、自民党が準備している。大手スーパーなどの安値攻勢を受けた「まちの酒店」が、歯止めをかけるようにと働きかけたことがきっかけだ。本来は市場が決める価格に踏み込み、規制を強めれば、消費者が安く買う機会を奪いかねない。困惑も広がる。

 規制案では「公正な取引の基準」を財務相が定め、従わない場合、販売免許を取り消すこともできる。自民党は24日の総務会を経て議員立法酒税法などの改正案を提出し、今国会での成立をめざす。公明党にも賛成を働きかけている。

 規制を強く求めたのは、中小の酒店でつくる政治団体「全国小売酒販政治連盟」(酒政連)だ。水口尚人政策部長は「公正な取引の土壌が整って、初めて店の創意工夫が生きる」という。採算を無視した不当な安売りは独占禁止法が禁じているが、「公正取引委員会の注意にも是正しない業者が多い」との声がある。

 酒の販売に対する参入規制は、1998年に段階的な廃止が決まった。酒政連は国会議員への働きかけを強め、相次いで献金もした。2003年に自由化を一部凍結する時限立法が成立しても価格競争は変わらず、コンビニへの事業転換もあり、「まちの酒店」である一般酒販店の割合は半減した。

 酒政連の資金力は落ちたが、政権交代後の13年から政治家への働きかけを再び強める。酒政連と同大阪府支部の13年の政治資金収支報告書によると、自民党の議連「街の酒屋さんを守る国会議員の会」会長の田中和徳衆院議員が代表の自民党支部に計20万円、事務局次長の有村治子女性活躍相の後援会に10万円を献金した。

 酒政連の水口氏は献金を「お手数をかけていることへの気持ち」といい、田中氏は「(献金と法案は)全く関係ない。仕入れ価格を割るような違法状態を憂えている」と語る。

 青山学院大の三木義一教授(税法)は「工夫を怠り免許で守られようとする発想が、業界の改革を遅らせた。自民党も票集めのため業界を使おうとしているようにみえる」と批判する。(青山直篤)