原発ゼロか、政権信認か 都知事選、論戦始まる

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 東京都知事選が23日告示され、新顔の16人が立候補を届け出た。2月9日の投開票日に向け、「原発ゼロ」の是非や、2020年東京五輪に向けた街づくりが主な争点となる。各候補・政党の告示日の演説のうち、細川護熙(もりひろ)、小泉純一郎両氏の「元首相連合」が「原発ゼロ」を掲げて、安倍政権への対抗意識を鮮明に打ち出した。対する安倍政権は、支援する元厚生労働相舛添要一氏がリードを保っていると見て、「原発ゼロ」の争点化には乗らず、政権の「信認」を受ける選挙に持ち込むべく総力戦の構え。選挙結果は安倍晋三首相の今後の政権運営など、国政にも影響を与えそうだ。

 郵政民営化を問うた2005年の総選挙以来、久々の「絶叫」だった。23日昼前の東京・新宿。細川氏の第一声に続いた小泉氏は、右に左に手を振りかざし、声を裏返らせた。

 「今回の都知事選ほど国政を揺るがす選挙はない。原発がなくては日本はやっていけないという方向を変えることができる」

 小泉氏は名指しはしないものの、攻撃の矛先を、かつて自らの政権で引き上げた安倍首相に向け対決姿勢をむき出しにした。「細川さんが原発ゼロで立候補するうわさがたったとたん、エネルギー基本計画の決定を先送りしたじゃないか」

 対する安倍首相は22日、外遊先のスイス・ダボスから出演したテレビ番組で「小泉さんは私にとって政治の師匠」としながらも、細川氏を応援することには「都知事選の議論を活発にさせる意味において有益ではないか」と受け流した。

 細川・小泉両氏の土俵には乗らない――。舛添氏を支援する自民、公明両与党の戦略だ。小泉氏の1時間前、支援する舛添氏に並んで新宿の街頭に立った両党の都連幹部は「脱原発」にいっさい触れなかった。東京五輪の成功や首都直下型地震、福祉といった国政に直結する政策を次々に挙げ「大切なのは行政手腕だ」とアピールした。

 細川氏の出馬表明時は「元首相連合」を強く警戒した政権側だが、自民党が18、19両日に独自に実施した世論調査では舛添氏が他候補をリードしていたという。過去に同党が除名処分にした舛添氏の支援に消極的だった首相も19日、「我々は舛添さんを応援していきたい」と明確にカジを切った。

 昨年末、特定秘密保護法をめぐって、安倍政権は支持率を落とした。このところ主要な地方選でも連敗している。押し込まれ気味の政権は、党幹部や閣僚を投入する「総力戦」で舛添氏を勝たせることで、「信認」を得て、政権運営の推進力につなげようと狙う。 ただ、党内には、過去に除名処分をした舛添氏を「応援する大義はない」(小泉進次郎復興政務官)と不満がくすぶる。一枚岩になれるかは不透明だ。

 「民主党本部として、都連の組織的勝手連として活動する方針を尊重する」

 民主党海江田万里代表は23日、党本部での両院議員総会で所属議員に語りかけた。この日、民主党幹部は誰ひとり、細川氏の応援でマイクを握らなかった。

 細川氏が出馬表明した当初は、政界再編への期待も膨らみ、民主党幹部は「日本新党バージョン2だ」と歓迎する向きもあった。ただ、一足飛びに再編につなげるのは難しい、との見方が広がりつつある。

 細川陣営には、民主、維新の一部、結い、生活の各党が支援に駆けつけた。民主を中心に「合同勝手連」を組む構想も浮上した。

 しかし、政党色を嫌う細川陣営は、かたくなに民主党や団体の支援を断った。細川氏が掲げる「原発ゼロ」の旗印も、政策が違う各党の足並みを狂わせた。細川氏に近い維新の議員は「細川氏が勝ってもすぐに政界再編にはつながらない」と話す。

 共産、社民両党は、日本弁護士連合会前会長の宇都宮健児氏を推薦。共産党山下芳生書記局長は「細川氏と宇都宮氏の一本化はあり得ない」と主張する。