安保法案 今国会で採決の考え 重ねて示す

参照元 安保法案 今国会で採決の考え 重ねて示す

安保法案 今国会で採決の考え 重ねて示す

9月14日 19時39分

安倍総理大臣は、安全保障関連法案を審議している参議院の特別委員会で、「熟議ののちに『決めるべきときは決めなければならない』というのが民主主義のルールだ」と述べ、今の国会で法案の採決を行って成立させる考えを重ねて示しました。
公明党の山口代表は、安全保障関連法案が参議院に送られて13日で60日となったことに関連して、「60日で参議院として結論を出せず、今日に至ったのは極めて残念だ。衆議院が、参議院が法案を否決したものと見なして再議決する『60日ルール』を適用しないようにお願いする立場になったが、参議院で議論し結論を出すべきだ」と述べました。
これに対し、安倍総理大臣は、「審議の進め方については、良識の府である参議院のご判断に従うべきものと考えている。政府としては、引き続き分かりやすく、丁寧な説明に努めていきたい。そのうえで、熟議ののちに『決めるべきときは決めなければならない』というのが民主主義のルールだ」と述べました。
また、安倍総理大臣は、集団的自衛権の行使による中東のホルムズ海峡での機雷掃海について、「今の中東情勢から現実に想定できるのか」と質問されたのに対し、「新3要件に該当する場合もありうるが、現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではない」と述べました。
維新の党の片山・参議院議員会長は、「法案について、『理解が進まない』『違憲だ』という議論が多いが、もう少し『急がば回れ』でスピードを落としたほうがよいのではないか」と指摘しました。
これに対し、安倍総理大臣は、「法案については、安全保障環境が変わるなかで1日も早く成立させたい。ただ、多くの国民の中で理解が広がっていないという状況も真摯(しんし)に受け止めながら理解してもらえるよう努力していきたいし、御党とも修正協議をさせていただいているが、他党の意見にもしっかりと耳を傾けていきたい」と述べました。
共産党の山下・書記局長は、新たな日米防衛協力の指針、ガイドラインについて、「日本が基地を提供し、アメリカが日本を防衛する、日米安全保障条約の権利や義務の関係を根幹から変えることになるのではないか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は、「今回の平和安全法制における存立危機事態は、国の存立が危うくなり、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるときに武力の行使をするということだ。いわばアメリカのために、義務を負って行使をするのではなく、日米安保条約上の義務を果たすということでもない」と述べました。
日本を元気にする会の山田・政策調査会長は、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の3党がまとめた修正案について、「われわれの修正案は、自衛隊がどこで何をするのかを国会がきちんと承認するなど、国民の不安を解消するものだ。安倍総理大臣は、政治決断で受け入れを判断してほしい」と述べました。
次世代の党の和田・幹事長も、修正案について「安保法制は必要だと思っているが、やはりそこには国会のチェックが必要だ。3党の修正案について、ぜひご決断を願えればと思う」と述べました。
さらに、新党改革の荒井代表は「国会の関与を強めるため、法案の修正を求めている。総理大臣として、国民の不安を取り除いて、日本を守る、戦争はしないという決意のもと、適切にご決断いただきたい」と述べました。
これに対し、安倍総理大臣は、「自衛隊の活動については、民主的統制を確保する観点から国会の関与が極めて重要で、平和安全法制には国会の関与について適切に定めている。中には例外として事後承認を認めているものもあるが、原則はあくまで事前承認であり、可能なかぎり国会の事前承認を追求していく」と述べました。そのうえで安倍総理大臣は、「修正案を提出されたことに対しては敬意を表したい。現在行われている政党間の協議には、政府として謙虚に耳を傾けたいと思っているし、なるべく多くの政党に法案に賛成していただきたいと考えている」と述べました。
参議院の会派「無所属クラブ」の水野賢一参議院議員は、海外での邦人救出について、「誰も反対しにくいが、歯止めの議論は絶対に必要だ。当然のことだとは思うが、自衛隊を派遣する時に受け入れ国の同意は、なぜ必要なのか」と質問しました。
これに対し、安倍総理大臣は、「受け入れ国の同意があることによって、当然スムーズに救出作戦を取り運ぶことができる。同時に、警察によって治安維持はなされているが、われわれが自衛隊を出さなければ救出できないというなかでも、憲法との関係においても、受け入れ国の同意が必要であると考えている」と述べました。
社民党の福島・副党首は、「『戦争法案』と言ったら自民党から削除要求を受け、『戦争関連法』あるいは『戦争につながる法』と変えるのはいかがと言われたが、それならばよいのか。武力攻撃を受けた被侵害国からの援助の要請が法文にはないが問題ではないか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は、「戦争は国際法上、違法であり、それを目的とした法律を作るはずがない。当然、集団的自衛権の行使となる際には、国際法上の要請は満たしていかなければならない」と述べました。
生活の党と山本太郎となかまたちの山本代表は、「安倍総理大臣は、『ジュネーブ諸条約をはじめとする国際人道法に違反する行為に対し、支援や協力を行うことはない』と答弁している。第2次世界大戦当時、民間人への無差別攻撃は禁止されていたが、アメリカ軍による広島、長崎への原爆投下、東京大空襲などは国際法違反の戦争犯罪に当たらないのか」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は、「自衛隊が活動するにあたって、国際法を順守し、国際法上、違法な行為に対する支援を行わないことは当然だ。ある国がジュネーブ諸条約をはじめとする国際人道法に違反する行為を行っている場合、わが国が支援や協力を行うことはない。このことは、アメリカを含め、対象国いかんによって変わることはない」と述べました。
また、委員会では、民主党の大野・元防衛政務官による質疑の際、国連のPKO活動に自衛隊を派遣する要件を巡る中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣の答弁について、大野氏が不十分だとして納得せず審議がたびたび中断しました。
一方、14日の委員会では、民主党維新の党が徹底した審議を求める立場から共同で提出した、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処するための「領域警備法案」の趣旨説明が行われ、審議入りしました。この中で民主党の大野・元防衛政務官は、「いわゆるグレーゾーン事態が発生した場合には、時間・権限・武器使用の隙間を埋めるシームレスな対応が必要だが、政府が提出した安全保障法制では何ら法的な手当てがなされていないため、法案を提出した」と述べました。