去年の衆院選 福岡高裁で初の「違憲」判決

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去年12月の衆議院選挙で、選挙区ごとの1票の価値に、最大で2.13倍の格差があったことについて、福岡高等裁判所は、一連の裁判で初めて、憲法に違反するという判断を示しました。選挙の無効は認めませんでした。このほかの裁判では、これまでに「違憲状態」の判断が8件、「憲法に違反しない」が3件となっています。
去年12月の衆議院選挙を巡っては、選挙区ごとの1票の価値に、最大で2.13倍の格差があり、投票価値の平等を保障した憲法に違反するとして、弁護士などのグループが、全国すべての小選挙区で選挙の無効を求めています。
25日、福岡、熊本、長崎、大分、佐賀の5つの県のすべての小選挙区を対象にした裁判の判決で、福岡高等裁判所の高野裕裁判長は、「全国で選挙区を5つ減らす『0増5減』の対象となった県以外は、以前の定数が維持され、構造的な問題が解決されず、格差が2倍以上の選挙区は、全国で13にも上っている」などとして、憲法に違反するという判断を示しました。
一方、「定数配分の是正に向けて選挙制度調査会で議論を重ねていて、是正が期待できる」として、選挙の無効は認めませんでした。
去年12月の衆議院選挙憲法違反とした判決は、初めてです。
25日は東京、広島、高松、金沢、それに松江の高裁や高裁の支部でも判決が言い渡され、このうち広島高裁と高松高裁は、「憲法に違反しない」と判断しました。
そのほかの高裁は、いずれも、憲法が求める投票価値の平等に反した「違憲状態」だったと判断しましたが、憲法違反とはいえないとして、選挙の無効は認めませんでした。
去年12月の衆議院選挙1票の格差を巡っては、全国14の高裁に18件の裁判が起こされ、これまでに「憲法違反」の判断が1件、「違憲状態」が8件、「憲法に違反しない」が3件となっています。
そのほかの判決は、来月28日までに言い渡されます。原告の弁護士グループは、判決を不服として上告していて、最高裁判所が、年内には統一的な判断を示すとみられます。

各党の反応

◆自民 谷垣幹事長は総理大臣官邸で記者団に対し、「判決がいくつか出ているが、それぞれの裁判所によって判決の出し方に若干の判断の違いがあるように見える。選挙制度の見直しを検討する有識者の調査会に議論してもらっており、まず、そこがどういう報告を出してくるかがいちばん大事なことではないか」と述べました。
◆公明 井上幹事長は総理大臣官邸で記者団に対し、「裁判所は0増5減をした国会の努力は評価している。議長の下に設置された有識者の調査会で行われている議論の結果を踏まえて、国会として責任を持って格差の是正に取り組んでいく必要がある」と述べました。
◆民主 枝野幹事長は記者会見で、「高等裁判所のレベルで相次いで違憲状態や違憲という判決が出ている。最高裁判所の判断を待つまでもなく、立法府として今の状況は十分なものではないということをきちんと受け止めなければならず、速やかに1票の格差是正を実現すべきだ」と述べました。
維新 松野幹事長は記者会見で、「民主主義の根源である1票の格差が2なら悪くて1.99ならいいということを地方の裁判所が示すことに若干、違和感を感じる。維新の党が国会に提出している国会議員定数の3割削減の案では格差が1.655倍に収まるので、こうした格差をなくす努力をしていくべきだ」と述べました。
◆共産 穀田国会対策委員長は記者会見で、「判決は当然だ。選挙制度を巡って何が問題かと言うと、現行の小選挙区制度に根本的な矛盾があることで、国民の民意を正確に反映する比例代表制度に全面的に改革するしかない」と述べました。

1票格差 判断のポイントは

憲法違反」や「違憲状態」の判決が相次いでいるのは、各地の高裁が、格差の是正に向けた国会の取り組みが十分ではないと判断したからです。
去年の衆議院選挙では、1票の格差を縮めるため、人口の比較的少ない県で、合わせて5つの選挙区を減らす「0増5減」の措置がとられ、1票の格差は、一時、2倍を下回りました。
また、格差が生じる原因とされてきた、「1人別枠方式」と呼ばれる議席の配分も、法律の規定から削除されました。
「1人別枠方式」は、すべての都道府県に、まず1議席を割り当て、残りを人口に応じて配分する方式です。
人口が少ない地方の声を国政に十分に反映させるという目的がありましたが、4年前、最高裁判所は、「もはや合理性は失われている」として廃止を求めていました。
今月19日から始まった一連の裁判で、広島高裁などは、「0増5減」の見直しによって、前回より格差が縮まったことを評価して、「憲法に違反しない」という判断を示しました。
しかし、そのほかの高裁は、「0増5減」の対象となった県以外は、「1人別枠方式」に基づく定数が維持されていることや人口の変動で再び格差が広がり、格差が2倍以上の選挙区が、全国で13に上ったことを指摘しました。
このうち福岡高裁は、「国会の取り組みは、4年前の最高裁の判決の趣旨を踏まえたものとはいえず、格差の是正に必要な合理的な期間をすぎている」として、「憲法に違反している」と結論づけました。
一方、そのほかの高裁は、いずれも「違憲状態」としたうえで、選挙制度の見直しには時間が必要で、有識者による選挙制度調査会で検討が進められていることなどから、憲法違反とはいえないと判断しました。