福岡市長選の街、小泉サンが歩いたら 本家に代わり一言

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 福岡市長選(16日投開票)の論戦を聴きに、「小泉ジュンイチロウ」氏が3日、同市に足を運んだ。社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」の俳優で福岡県北九州市出身の松下アキラさん(50)。郵政選挙で圧勝した宰相に扮した松下さんはジュンイチロウ氏の口調で、争点のかすむ市長選に「今こそワンフレーズ選挙を」と注文を付けた。

 「よろしくお願いします」。現職の高島宗一郎氏(40)=自民、公明推薦=は3日午前、市中心部の商店街を練り歩いた。高島氏のジャンパーに「福岡をアジアのリーダー都市へ」とあるのに、ジュンイチロウ氏は目をとめた。

 「ポジティブだ。高島君らしい」と評価。「政治家なんだから、やりたいことがはっきりしてなきゃ。オレは『郵政民営化』にこだわり抜いた」とも語った。

 ただ、高島氏が直後に行った街頭演説は約2分。このフレーズがなかった。ジュンイチロウ氏は「演説時間が短かったせいか、通りすがりの人が思わず立ち止まるフレーズがなかったね」と残念がった。

 午後、ジュンイチロウ氏は西区の市営地下鉄駅前に現れた。返り咲きを目指す前職の吉田宏氏(58)がマイクを握っていた。

 現市政を批判し、子育て支援などに力を入れると訴える吉田氏を、じっと見つめるジュンイチロウ氏。カフスをしきりと触るしぐさに気づき、「復活しようという迫力がいまひとつだ」。本家・小泉純一郎元首相は3回目の挑戦で自民党総裁の座を射止めただけに、物足りなく映ったようだ。

 ただ、演説後に吉田氏と握手し、ジュンイチロウ氏は驚いた。「手の握り方が優しい。あとは、生まれ変わった自分を見せるだけだ」と語った。

 この日、NPO共同代表理事の大川知之氏(37)も「市民一人ひとりが主役のまちづくりをしよう」と訴え、前自民市議の北嶋雄二郎氏(65)は「超高齢化社会に備え、困難な時代を乗り切ろう」と呼びかけた。元幼稚園教諭の嶽村久美子氏(64)=共産推薦=は「子どもに冷たい市政をストップさせる」。元民主市議の金出公子氏(67)は「笑顔あふれる福岡にしたい」と支持を訴えた。

 福岡市長選は熊本市長選とともに2日に告示された。政令指定都市など都市圏の首長選では軒並み低投票率が続く。福岡、熊本両市長選も例外ではない。

 ジュンイチロウ氏はそんな現状を「『オレはこれをやる』と言い切るパワーを持った候補者が減り、有権者が困っている」と分析。「街頭で立ち止まってさえもらえれば、あとは調べてくれる。だから今こそワンフレーズなんだ」と述べ、心に響く一言が必要だと強調した。

 一方で、小泉元首相は今年2月の東京都知事選で「脱原発」のワンフレーズを掲げて細川護熙元首相を応援したが、敗れた。ジュンイチロウ氏は敗因を「細川さんの第一声。話し方も声もすべてが頼りなかった」とみる。そして、続けた。「ワンフレーズをただ言えばいいのではない。タイミングよく、興味を持つように発信しないと、有権者には届かない」(磯部佳孝、渡辺純子

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 〈コント集団「ザ・ニュースペーパー」〉 1988年に結成。日々のニュースを題材に、政治家らのモノマネを通じて、笑いながら社会の本質を突くコントを繰り広げる。松下さんのほかに、安倍シンゾウが持ちネタの福本ヒデさん(43)らが所属している。