軽減税率、参院選にらみ首相動いた 課題は山積

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 安倍晋三首相は14日、食品などの税率を抑える軽減税率の導入に向けて、宮沢洋一・自民党税制調査会長に具体策の検討を指示した。首相は来年夏の参院選を見すえ、消費税率を10%に引き上げる2017年4月には消費者の負担を軽くする軽減税率を間に合わせたい考えだ。ただ、対象品目の線引きや財源問題など課題は多く、先行きはなお見通せない。

 14日朝、首相は官邸主導で党税調会長に就任させた宮沢氏を首相官邸に呼び、17年4月の軽減税率導入に向けて公明党と調整するよう指示。導入で影響を受ける商工業者らの負担にならない「現実的な解決策」を検討するよう求めた。

 軽減税率の導入には、自民党の支持基盤である中小事業者の反発が強い。だが、議論を預けた自民、公明両党の与党協議が暗礁に乗り上げるなか、これ以上放置すれば、国民負担の軽減策が宙に浮いたまま来夏の参院選を迎えかねない。菅義偉官房長官はこの日の会見で「準備の期間もあるので早めに方針を決定する必要がある。そういう中で総理が新しい税調会長に指示した」と強調した。

 官邸も当初は、財務省が打ち出した増税分を後から消費者に還付する案について、「与党の議論を見守る」と静観していた。ただ、還付案ではマイナンバーカードを買い物の際に毎回示す必要があり消費者の手間が大きい。官邸では「財務省の還付案では国民が理解しない」(幹部)との意見が強まった。

 消費税は国民の関心が高いだけに、判断を誤れば来夏の参院選に響きかねない。首相は世論の反発が強いとみた還付案を退け、選挙協力も受ける公明党が求める軽減税率の導入にかじを切った。

 さらに、導入時期を明言したことで議論を加速させる狙いもある。ある政権幹部は「軽減税率が導入できないなら、消費税は上げない。だから財務省は今、一生懸命にやっている」と話している。