衆院鹿児島2区補選 金子氏が当選確実

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 衆院鹿児島2区補選が27日、投開票され、自民新顔の金子万寿夫氏=公明推薦=が無所属前職の打越明司氏ら5氏を破り、当選を確実にした。与党側は「政権信任選挙」と位置づけていたが、国の重要課題の論戦は低調だった。補選は、医療法人「徳洲会」グループの公職選挙法違反事件を受け、徳田毅氏が議員辞職したことに伴い実施された。

■地方の景気回復を前面に当選確実

 「安倍政権の経済政策の効果が、地方の隅々まで行き渡るようにする」。自民新顔の金子万寿夫氏(67)は地方の景気回復の訴えを前面に出してきた。与党の候補として、政権とのパイプの必要性も強調し、初の議席を手にした。

 「政治とカネ」を巡る野党の批判には「有権者には政策で選んでほしい」と反論。国道整備や奄美群島の振興策拡充など、地域に密着した政策を訴え続けた。

 県議会議長を8年務めた地元政界の重鎮。だが、奄美大島出身で、鹿児島2区の有権者の3分の2が集中する本土側での知名度向上が課題だった。鹿児島市などでの遊説に重点を置いたことに加え、安倍晋三首相ら党幹部や閣僚の応援を受け、浸透を進めた。

有権者の声は

 「政治とカネ」問題で逆風が吹く中、地域経済の活性化に期待する声を受けて自民新顔の金子万寿夫氏(67)が27日、衆院鹿児島2区補選を制した。有権者からは、安倍政権が進める環太平洋経済連携協定(TPP)などへの注文を投げかける声も多い。

 「国にパイプがある与党で、奄美の事情が分かっている島の人じゃないと」。金子氏に投票したという、鹿児島県奄美群島・徳之島の会社員男性(36)は話す。選んだ基準は「何といっても地域振興策。島はどんどん寂れているから」。

 医療法人「徳洲会」グループの公職選挙法違反事件に端を発し、徳田毅衆院議員の辞職を受けた選挙。だが「政治とカネの問題は判断基準にならない。騒ぎも2、3年もたてば忘れられるのでは」と漏らした。

 安倍政権が進めるTPP交渉。砂糖やその原料は、コメや牛肉などと並んで、日本が関税撤廃の対象から外すよう求めている「重要5項目」の一つ。徳之島でサトウキビを作る伊仙町の大竹勝人さん(51)はTPP参加に反対の立場だが、金子氏に投じた。

 32ヘクタールの畑を運営する大規模農家。国の補助がなくなれば、外国からの安い砂糖に歯が立たないと感じている。「農家の意見や思いを聞いてもらう以外、どうしようもない。そのためには政権与党の人に」と期待する。

 鹿児島市の女性(58)はアベノミクスに期待して金子氏に投票した。清掃のパートで1日7時間、週に6日働き、月の手取りは約10万円。ぎりぎりの生活が続く。「鹿児島まで恩恵が届くようにしてほしい」

 安倍政権が進める集団的自衛権の行使容認に不安を感じつつ、金子氏に投じた人もいた。鹿児島市の派遣業の女性(31)は「今の外交は中国や韓国と意思疎通ができていない。これではますます関係が悪くなる」と心配する。だが、目の前の生活を考え、投票基準は景気対策だった。アベノミクス効果で正社員採用が増えることを期待する。「働く場所や給料を増やしてほしい」と注文をつけた。

 一方、「消費税が8%になって客足に影響が出た」と感じている鹿児島県指宿市の居酒屋経営、中原誠さん(54)は、無所属前職の打越明司氏(56)に入れた。2012年の衆院選では、経済の活性化を期待して自民候補に投票。公共事業が増えても自身の生活が良くなった実感はない。「消費税を上げるなら、税金を徹底的に有効に使ってほしい」と話す。

 30年来の自民党員という鹿児島市の会社員男性(58)は今回、初めて自民系以外の候補に投票した。徳洲会グループが「集票マシン」となったとされるこれまでの状況に嫌気がさして、無所属の打越氏に投票した。「自民党は今回も、『とにかく票を集め、勝つ』というだけの選挙をした」と感じ、「古い体質が許せない」と語った。

 選挙戦では、九州電力川内原発(同県薩摩川内市)の再稼働の問題は、大きな争点にならなかった。鹿児島市の看護師の女性(42)は再稼働に反対している諸派新顔の有川美子氏(42)に投じた。事故があった場合、「子どもや義父母を連れて素早く逃げられるはずがない」と感じる。「安倍政権には、原発の安全性を高める努力よりも、再生可能エネルギーを拡大する方に力を注いでほしい」