衆院選前哨戦は1日だけ 知事選で「活動制限」 和歌山

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 衆院解散後の3連休、立候補予定者は各地で街頭に立ち、事実上の選挙戦をスタートさせた。だが、和歌山県の予定者たちはこの機会を思うように生かせない。知事選があり、その期間中は政治活動が制限されるからだ。衆院選公示前に活動できる時間は、わずか1日。各陣営とも歯がゆい思いで、訴えを伝えようと知恵を絞る。

 「みなさん、○○候補をよろしくお願いします!」

 22日夜、和歌山市内であった知事選候補者の演説会。応援弁士として熱弁を振るう2人の男性がいた。2人とも衆院選の立候補予定者だ。だが、自らのアピールはほとんどせずに席についた。

 衆院選の立候補予定者は投票を呼びかけない限り、公示前でも街頭演説などの政治活動をできる。だが、和歌山県では30日の投開票まで知事選が続く。総務省選挙課は「有権者が知事選と混同する可能性があり、紛らわしい。公職選挙法で、街頭演説やポスターの掲示、ビラ配りなどはできない」と説明する。

 知事選2日後の12月2日には衆院選の公示が迫る。公示前の「前哨戦」は1日だけ、ということになる。

 和歌山2区で立候補を予定する自民前職、石田真敏氏(62)の陣営は「街頭演説ができず、新たに顔や名前を覚えてもらう機会がない」と困惑する。まずは支持者や推薦団体への地道なあいさつ回りを始めた。

 力を入れるのは、知事選で自民が推薦する候補者の応援だ。陣営は「衆院選の話はできないが、『応援』として露出を増やすだけでも意味はある」と期待する。

 1区に立候補予定の民主前職、岸本周平氏(58)の陣営も「初めての経験で困っている。これまでの下積みが試される」。駅前やスーパーなど街頭に立つことにこだわってきたが、知事選終了までは街頭演説を封印。かわりに地元のイベントに足を運び、顔を覚えてもらう。知名度には自信があるといい、「どの陣営も活動が制限されるため、むしろ岸本の強さが発揮できるかも」とも話す。2区で立候補予定の維新前職、阪口直人氏(51)の陣営も同様に「割り切って支持者のあいさつ回りに集中する」と話す。3連休は地元の祭りに顔を出し、あとはひたすらあいさつ回りを続けた。

 1区から立候補を予定する共産新顔、国重秀明氏(54)は衆院が解散した21日、すぐにJR和歌山駅前に立った。ただし、できるのは行き交う人に手を振るくらい。陣営は「法に触れない限りで、できることをやる」との方針だ。

 政党名を記したビラやたすきも用意したが、県選管から法に触れる可能性を指摘された。国重氏は「ややこしいね」と苦笑いする。

 公職選挙法は、知事選と衆院選など二つの選挙期間が重複している場合なら、同時期に選挙運動を行うことは可能としている。しかし今回のように選挙が連続するのは極めてまれで、県選管には各陣営から問い合わせが相次いでいるという。

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 和歌山県知事選は、3選をめざす現職の仁坂吉伸氏(64)=自民・民主・公明、社民県連合推薦=、新顔の畑中正好氏(62)=共産推薦=のいずれも無所属の2氏が立候補している。(滝沢文那、加藤美帆)